旧湯浅駅舎改修活用計画

新駅利用に伴い、空き家状態であった旧湯浅駅駅舎の利活用に伴う改修計画のランドスケープ設計を行いました。

そもそもは湯浅の町並み・空き家調査からスタートしました。
湯浅町は醤油や金山寺味噌の醸造で栄えた昔ながらの町並みが魅力的である一方で、他の地域同様の人口減や少子高齢化などの課題も抱えている地域。

伝建地区は、小さな路地が多く車では行きづらいことや、駅から伝建地区まで歩くと15分以上かかることなど気軽に訪問する上での支障もあり、少し元気が失われている状態でした。

将来的には伝建地区を主軸に地域一体となった計画にしていくために、まずは町の入り口である駅から手をつけることになりました。
数年前に、新駅舎に建て代わり、図書館と防災機能を持つ駅舎になっていた湯浅ですが、風情があるこの旧駅舎が残っていました。
今後のまちづくり計画の推進のために、旧駅舎を改修利活用することとなりました。

様々な検討がなされ、事業者が施設整備を行った後、運営・維持管理業務を行う、DBO(Design Build Operate)方式により旧駅舎利活用を実施することに。地元の工務店を交えたチームが組まれました。

業務が始まると、以前町とJRとで検討をした図面が出てきました。
それは旧駅舎の前にバス2台とタクシー3台を停める駐車スペースを設ける案でした。
その案を見た上で、旧駅舎活用は利用者が主役になれる広場にすべきということになり、デザインの検討が始まりました。バリアフリー動線も必要であったことから歩車分離にしつつ、将来的にマルシェなど地域イベントも行いたいという要望も加わり、旧駅舎の前面に人が多く集まれる広場を生み出すことができました。

他には、少し離れた湯浅の伝建地区や広川へのアクセスにちょうどいいレンタサイクル利用も考慮し、駐輪場が加わったり、新駅舎から旧駅舎へつなぐ道も雨に濡れず行けるようキャノピーを設けたり。
新駅舎のホーム際でくつろいだりすることもできるようにし、電車好きな男の子に人気の席となっているのが面白いです。(新駅舎への出入りはできません)
また、駅から見えるお茶公園にふわふわドームがある、そこで跳ねてる子供たちが見えるのですが、旧駅舎の芝生でくつろいだり遊んだりしているときに離れた子供たちと視線が合うのが隠れた楽しみになっているような気も。

建物は当時の形を保持・復元しつつ、昭和の改修で失われていたドーマー窓の復元ができ、賑やかだった当時の駅舎に近い形となるよう改修を行いました。

2年かかった改修の竣工時には町のみなさんとモチまきを行って完成をお祝いできたのがいい思い出となっています。

利活用が始まった旧駅舎には「湯浅米醤」という店舗が入っていますが、スタート時と比べてメニューも増え続け、今では地元の方たちのモーニング・ランチ・昼下がりのティータイムスポットになっています。今も時々訪れますが美味しいのでぜひお立ち寄りください。

総括・建築設計:株式会社つぎと
施工:株式会社平林組
運営:株式会社enji・株式会社海南社(源じろう計画事務所)

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