クジラのランドスケープデザイン

「素直な場所づくり」
 ランドスケープデザインは一言で示すと、「風景のデザイン」だったり、「屋外の公共空間の計画・設計」ということになるのですが、その土地らしさ・地域らしさを考え、場所づくりを行うことが大切なことだと考えています。

 もともとは人が住み着いてもいなかった場所が、何かのきっかけで人々の居場所になり、長い時間をかけて、今の状態になっていることからです。何もない原っぱであろうと、時間が積み重なっており、その土地の残り方・使われ方の痕跡が、現在の状態であり、これから手を加える場所も同様です。
 また、風景という視点で考えると、その場所がこれまでも、これからも風景の一部になるためです。

 特に、日本では古くから里山や風土に根ざした建築など、自然や地域の生態系に配慮した環境が形成されていました。
 一方で、現代では、伝統的で文化的な風景の素晴らしさは讃えられながらも、新しい都市や市街地では、自然が破壊され、利便性が第一に追求されている開発がなされていることがほとんどです。戦後の経済成長を経て、生活は便利になってきているのかもしれませんが、ある種の豊かさは失われつつあるという見方もあります。

 なぜ、都市計画もない昔に風情ある風景や町並みができたのか不思議に思うところですが、それぞれの地域に応じた町のでき方があったのかと考えられます。 素材や工法が限られたこと、長距離の運搬が困難だったこと、その他の情報や用意できるお金も少なく制限があったことなど、それゆえに自然と秩序が生まれていたのかと。加えて、自然と共に生きることが絶対で、そのありがたみを理解している大工やお百姓さんなど地域の人々が、地域の環境を考え、日々生業と共に暮らしてためとも想像されます。その結果生まれた風景・町並みが現代でも風情をあるものとして残っているように感じられます。

 現代は、それぞれで様々な選択ができ、規制もない場合は無秩序にものをつくりだせる時代です。それゆえに、縛りの少ない景観は荒れやすいものと考えられます。ランドスケープアーキテクトは場所づくりと平行して、日本の町並みや風景がどうあるべきかを考え、発信する時期にきていると考えています。
 そんな日本の文化的な風景の維持・形成に少しでも寄与していければという想いもあります。


 このように、土地に根付いている記憶とその風景に重点をおいて、多くの人が関わる場所づくりに取り組んでいきたいと考えています。
 また、空間設計の一面に加えて、ランドスケープデザインの本質は、関係性を考える分野とも考えています。それは、自分たちがつくる景色だけでは完結せず、自然や隣り合うモノ、関わる人たちなどいくつもの要素が合わさって風景となるためです。


 地域の風景に根ざして、空間に手を加える、「素直な場所づくり」
 これがクジラが取り組んでいくランドスケープデザインです。